楽天は9月9日、キャッシュバックを武器に会員制アフィリエイトモールを展開する米
Ebatesを1000億円で買収することを発表した。

 楽天は2月には無料メッセージングアプリのViberを900億円以上で買収している。こ
れらの連続的なM&Aを通じ、三木谷浩史会長兼社長は、どのように事業の絵図を描こうとし
ているのか。戦略の核心部分に迫った。

質問:現在、楽天の海外売り上げ比率は6%。それをなるべく早く50%に引き上げると
宣言しています。どのようにして海外での売り上げを伸ばすのでしょうか。

三木谷:楽天は日本で30%強のイーコマースマーケットのシェアを持ち、ナンバーワン
です。アメリカで言えばAmazonさんが強い。各国に強いプレイヤーがいる。ただ、よくよ
く考えみると、市場全体を寡占しているわけではない。実はそれ以外のイーコマースのサ
イトを合わせたほうが大きいわけです。よって、そうしたサイトをどうやってうまく取り
込んでいけるかが海外における成長のポイントになる。

 小さいサイトにおいて誰がマネタイズして儲けていたかと言うと、例えばGoogleさんの
ような会社が検索連動広告などで稼いでいた。大手以外は稼げない構造になっていた。

 ここに、楽天の出番がある。一歩下がってみると、多くのサイトをわかりやすいインタ
ーフェースでまとめてあげれば、もっと使われるようになる。ユーザーにも適切なベネフ
ィットがあって、マーチャント側にも適切な利便性とエコノミクスがありますよ、という
サービスをつくることによって、今までとは違った形のバーチャルなショッピングモール
が実現できるわけです。

質問:楽天市場のモデルを世界展開する、ということだと思いますが、そこにEbatesはど
う組み込まれるのでしょうか。

三木谷:お店がこのモールに参加する場合、手間をかけずに簡単にできますよ、という風
にしたい。それが大きく前進するのが今回のディールの核心的なところなのかな、と思い
ます。おそらく多くの人が「あ、そういう手があったか」と驚いたと思うんですね。後ろ
からガツンと頭を叩かれたように感じた人も多いと思います。これは、普通とは全然違う
アングルからのアプローチですよね。しかし、楽天がずっと考えていたことなんですよ

三木谷:つまり、楽天はサービスの規模もどんどん大きくなってくる。オープン化も進め
てきており、今ではAPIも公開するようになった。そうした中で、さらにオープンにするた
めにはどうしたらいいか。オープンだったら、すでにGoogleのようなものがあるとは言う
ものの、そうは言っても単なるサーチエンジン、単なるリンクじゃつまらないよね、と。
ここのところに、メンバーシップのモデルが成り立つ。楽天はメンバーシップの会社であ
り、Ebatesもキャッシュバックというメンバーシップ。しかも、Ebatesは会員のロイヤル
ティが極めて高い。

 僕らの戦略というのはやっぱりメンバーシップというものをベースにして、そしてイー
コマースのトランザクションのボリュームを上げていこうということなんです。

質問:普通の見方をすれば、世界の基準は垂直統合型のAmazonみたいな世界があるから、
あれが基準だと多くの人が考える。ショッピングモールの楽天は日本でたまたま成功した
だけ、という見られ方もする。しかし、モール型は世界で伸ばしていける、と。

三木谷:いや、我々の競合さんも、やっぱり直販型からからマーケットプレイス型に変え
ないと、プロダクトの幅も出ないし、それから楽しさも出ない、ということで変わってき
ていますよね。ある意味では、一番プリミティブなものが直販型モデル。その次がマーケ
ットプレイス。そして楽天のモデルが、ネクストジェネレーションだと思っている。ほか
のところは直販型からマーケットプレイス型に乗り変えつつある、という今のタイミング
で、我々さらにもう一歩先に行く。

 これを、アメリカ、ヨーロッパを含めて世界で一気に展開をしていく。他国では、何か
を買う場合には、その国で有名なお店から買いたいという思いがある。例えばアメリカの
人はどこから買いたいのかと言うと、(通販会社の)ニーマン・マーカスから買いたいと
か、あるいは(化粧品や香水を扱う)セフォラから買いたいとか。そこを結びつけていき
たい、ということです。

質問:楽天IDとViber(バイバー)IDの統合を進めます。これにより、かなり大きな楽天I
D経済圏ができるわけですね。

三木谷:Viberは今がだいたい8億人なんですが、1日100万人以上が追加していってい
ますから。将来的には夢として20億人を実現したいと思っています。

質問:それだけの人数が、共通体験をできるようになる。

三木谷:同じ通貨が発生するということですよね。

質問:楽天のビジネスモデルの特徴は、楽天カードを含む金融と両輪で伸びていくという
ものです。やはり海外売り上げを伸ばしていくためには金融機能が重要になるのでは?

三木谷:そうですね。楽天は三つのピラー、すなわちイーコマース、コンテンツ、ファイ
ナンスを、今までのクローズ型からオープン型に変えていこうと考えています。ところが
ファイナンスの場合、免許制が非常に大きなポイントになってくるわけです。アメリ
ではアメリカのバンキングライセンスが必要になりますから。もちろんバンキングライセ
ンスをとれたところでは自分でクレジットカードを発行していきます。台湾は取れたんで
、台湾はやります。

 ただ、アメリカの場合、今のところはパートナーシップで進めていきたい。すでに提携
によって楽天カードを発行しており、これはうまくいっています。イーコマースの会社の
中でペイメントをやっている会社はけっこうありますが、ピュアに金融を手掛けているの
楽天だけだと思います。自前、パートナーシップの両面から、金融についても国際化し
ていこうと思ってます。

(*2へ続く)

(山田 俊浩)

(百万円)    売上高  営業利益 経常利益  純利益 1株益¥ 1株配¥
◇本2013.12  518,568 90,244 88,610 42,900 32.6 4記
◇本2014.12予 560,000 100,000 99,000 59,000 44.7 4-5 
◇本2015.12予 610,000 110,000 109,000 65,000 49.2 5-6 
◇中2014.06  276,602 44,776 43,742 23,086 17.5 0 
◇中2015.06予 290,000 50,000 50,000 30,000 22.7 0 


(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部